第80章 妊娠

第1章

桐島グループ。

社長室は、朝一番から重苦しい低気圧に包まれていた。

佐々木隆美は部屋へ入るなり、桐島征十郎の沈みきった顔色を見て、思わず足音を忍ばせた。

デスクの前に立つと、桐島征十郎の漆黒の瞳が彼を捉える。その目の下には、色濃い隈が刻まれていた。

「昨晩も、よく眠れなかったのですか?」

佐々木隆美は心配せずにはいられなかった。

桐島征十郎はズキズキと痛むこめかみを指で押し、低い声で言った。

「何か用か」

問いには答えなかったが、それこそが答えだった。佐々木隆美は悟った。やはり眠れていないのだ。

これほど長く不眠が続いているというのに、どうやって精神を保っているの...

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