第84章 確かに本当だ

藤咲花音は反応する間もなく、巨大な掌に手首を強く掴まれた。

「目が覚めたなら起きろ」

桐島征十郎の低く沈んだ声には、明らかな不機嫌さが滲んでいた。

その声に意識が一気に覚醒し、藤咲花音は彼の手を振りほどいて、気まずそうに身を起こした。

座り直すや否や、彼女は慌てて口元を手の甲で拭った。よだれが垂れていないか心配になったのだ。

「わざとではありません……つい、うっかり眠ってしまって」

身だしなみに問題がないことを確認すると、藤咲花音はバツが悪そうに謝罪した。

桐島征十郎はしばし沈黙し、読めない視線を彼女に向けた。

「今の夢、何を見ていた?」

藤咲花音は呆気にとられた。

夢?...

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