第10章

山下麻友が耳にしたのは、背後を吹き抜ける一陣の風音だけだった。

反応する間もなかった。後頭部に激痛が走り、全身が痙攣する。彼女は制御を失い、その場に崩れ落ちた。

私はいつも反応が遅い。だからいつも損ばかりする。

薄れゆく意識の中で、彼女はぼんやりとそう思った。

奇妙なことに、意識が完全に闇に落ちる寸前、力強い腕が彼女を支えたような気がした。

おかげで、顔面から地面に突っ込む無様な事態だけは避けられたようだ。

だが、その感覚はあまりに曖昧で、闇が訪れるのが早すぎた。きっと錯覚だろう。

彼女は完全に意識を失った。

どれくらいの時間が経っただろうか。再び目覚めると、鼻先に消毒液の匂...

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