第107章

阿部柚汰が、この期に及んで自分が罠に嵌められたことに気づかないほど愚かだったなら、救いようのない馬鹿だっただろう。だが彼は気づいた。

彼はプライドも何もかもかなぐり捨て、阿部雄輝の足元にすがりつき、なりふり構わず泣き叫んだ。鼻水と涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら。

「さっきのは全部嘘だ! 怖くてつい口走っただけなんだよ! 信じてくれ! 俺が美奈さんを傷つけるわけないじゃないか、兄貴の子供に手を出すなんてありえない! 俺たちは血の繋がった兄弟だろ!」

その言葉はあまりに哀れで、そして真に迫っていた。阿部雄輝は身じろぎもせず、ただ彼を見下ろしている。

山下麻友は、まさか彼が情にほだされたの...

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