第120章

山下麻友は、聞き間違いかと思った。

「……何ですって?」

「いいと言ったんだ」

山口洸人は背を向けたまま、彼女に向き直った。

「お前の好きなようにすればいい。記者会見は開かなくていいが、お前自身のやり方で声を上げることは止めない。佐々木家のほうは、俺が処理しておく」

山下麻友は信じられないという目で彼を見つめた。

「どうして……?」

彼は彼女を止めるべきではないのか? 山口家の利益のために、事態を穏便に済ませようと彼女に圧力をかけるべきではないのか?

山口洸人は答えなかった。ただ手を上げ、彼女の頬に残る傷跡にそっと触れただけだった。

彼の手指は冷たく、皮膚に触れた瞬間、山下...

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