第142章

病院を出ると、午後の日差しが目に突き刺さるようだった。

山下麻友は階段の上に立ち、タクシーを拾おうとしたところで、背後から小林柚奈の声がした。

「お姉ちゃん!」

山下麻友が振り返ると、ランチジャーを提げた小林柚奈が小走りでこちらに向かってくるのが見えた。その額には、玉のような汗が滲んでいる。

「柚奈、どうして傘も差さずに来たの?」

山下麻友は慌ててティッシュを取り出し、彼女の額の汗を拭ってやった。

「お母さんにスープを届けに来たの」

小林柚奈は目を細めて笑い、手にした保温容器を慎重に揺らしてみせた。

「お母さん、病院の食堂のご飯は不味いって言って、どうしても家で作ったのがいい...

ログインして続きを読む