第156章

山口洸人はその場を去った。

ひとり残された山下麻友は、むしろ肩の力が抜けた気がして、スマホを取り出すとライブ配信を立ち上げた。ファンたちはすでに今か今かと待ち構えていたらしく、通知が届いた途端、どっと配信ルームへなだれ込んでくる。

     

そのころ――。

人波をかき分け、左へ右へとすり抜けていき、山口洸人はようやく、さっき視界の端をかすめた影に追いついた。

近づいた瞬間、確信する。小川渚は、わざとここで足を止めて彼を待っていたのだと。

ここは路地の奥まった一角で、メインストリートの喧噪から切り離されたように静かだ。遠くで響くざわめきが、壁一枚隔てた別世界の音に思える。

男が...

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