第166章

「その人の顔は見たんですか?」

山下麻友は畳み掛けた。

警備員は首を横に振る。

「あの日、雨がひどくて、おまけにマンションは停電しててね。顔まではよく見えなかったんだが、体格からして男っぽかったな」

「当たり前だろ。人を軽々と担ぎ出せるんだから、十中八九男に決まってる」

傍らにいたもう一人の警備員が口を挟む。

山下麻友は軽く歯を食いしばった。

「どこで見たんですか?」

ここまで言った以上、警備員も隠す必要はないと判断し、彼女をその夜と同じ場所へと案内した。

そこは住宅街を抜けるメインストリートだった。

両脇には植え込みや茂みが連なり、オレンジ色のくすんだ街灯に照らされたそ...

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