第170章

小林の母はソファに座り、小林柚奈の服をチクチクと縫っていた。ふと意識が遠のき、うっかり針先を指に刺してしまう。

彼女は痛みに動きを止め、ふうとため息をついた。

ちょうどその時、玄関のチャイムが鳴り響いた。

小林の母は手元の服を置いてドアを開けに向かった。そこに立っている山下麻友の姿を見るなり、すぐさま口を開く。

「どうしたの? 柚奈のことで何か分かったの?」

山下麻友は淡々とした声で返す。

「中に入れてくれないんですか?」

彼女はまだドアの前に立っている。ここで話すのが不適切であることは明らかだった。

「ああ、ごめんなさいね。それじゃあ、まずは入って」

小林の母は道を空け、...

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