第176章

橋本美波はわずかに言葉を止めた。けれど表情は崩さず、微笑みを貼りつけたまま言う。

「もちろん分かってるよ。洸人は人に騙されるのが嫌いだし、陰でコソコソ小細工されるのなんて一番嫌うでしょ? それなのに、どうして急にそんなこと聞くの? 誰かに何かされたの?」

探りを入れるような口調だった。

山口洸人は窓の外へ目をやった。眉目は淡々としているのに、瞳の奥だけが沈んでいる。

「数日前、小林柚奈が誘拐された」

橋本美波の瞳が、かすかに揺れた。

「小林柚奈……知ってる。山下麻友の従妹だよね。どうしてそんなことに……」

「攫ったのは佐久間竜也だ。お前も知ってるだろ」

あまりに直球だった。

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