第28章

「山口社長」

小林海の声には、隠しきれない無力感が滲んでいた。

「申し訳ありません、山口社長……。国内外のチームをいくつも当たりましたが、損傷があまりに激しく、データの復旧は……絶望的とのことです」

山口洸人の顔色が沈んだ。

やはり、直らないか。

彼は数秒沈黙した。脳裏に昨日の、死に物狂いで懇願していた山下麻友の姿がよぎる。

「わかった。新しいのを買え」

彼は命じた。

「外見は全く同じで、スペックは高いやつだ。至急、清月マンションへ送れ」

……

午後、山下麻友は松本綾乃と会うことになった。

山下麻友が先に到着し、不安な気持ちでしばらく待っていると、松本綾乃の声が響いた。...

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