第29章

――彼の心の中で、私はそこまで汚れた存在なの?

山下麻友は、胸の奥がすうっと冷えていくのを感じた。絶望に似た感情が、じわじわと染み広がってくる。

そのとき、スマホの着信音が、部屋に溜まった重苦しい空気をぶつりと断ち切った。

「焦るな。すぐ行く」

彼はスマホにそれだけ告げると、上着もろくに整えずに慌ただしく出ていった。

扉が閉まった瞬間、視界が一段暗くなる。

麻友は反射的に身をすくめた。――彼は知らないのだろう。自分が暗いところが怖いこと。夜は電気スタンドを一つ点けていないと眠れないこと。

なのに、そのスタンドを、彼はさっき消した。

息が詰まる。指先が震えながらスイッチを押して...

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