第31章

柴田大成が淡々と言った。

「山口社長がこの案件を直で確認したいそうでな。様子を見に来られた」

阿部雄輝は慌てて前に出て頭を下げる。

「山口社長、お越しになるなら事前に一言いただければ……もし——」

「俺がいつ来るか、お前に報告でもしなきゃならんのか?」

阿部雄輝の喉がひくりと動いた。すぐに腰を低くする。

「滅相もございません。社長のお越しはいつでも、こちらはお待ちしております」

山口洸人はソファーに腰を下ろし、薄い表情のままグラスを傾けた。阿部雄輝には、視線ひとつくれない。

見かねた柴田大成が短く釘を刺す。

「山口社長はお時間がない」

「は、はい」

阿部雄輝は即座に案件...

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