第33章

「大丈夫です」

山下麻友は口の端を無理やり引き上げた。

目の前で狼狽している阿部雄輝の姿が、どこか滑稽に思えたのだ。

なにしろ、彼女が入社したばかりの頃、彼は彼女のことを嘲笑っていたのだから。

それからどれほどの時間が経ったというのか。彼はもう二度も、こうして彼女に頭を下げている。

彼女のあまりに淡々とした態度に、阿部雄輝は呆気にとられたようだった。

彼は一瞬動きを止め、それから引き出しから小切手を取り出し、山下麻友の前に滑らせた。

「今回も君には嫌な思いをさせた。これは十五万だ。私からのせめてもの償いだと思ってくれ」

山下麻友はその小切手を見つめ、以前、大勢の前で「浮気相手...

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