第35章

山下麻友は一晩家で寝たものの、目が覚めても体の痛みはまだ引かなかった。顔の腫れだけは収まって、人前に出られる程度にはなっている。だから彼女が最初に向かったのは、会社だった。

阿部雄輝を探すために。

あの日のことを問いただそうとすると、阿部雄輝は露骨に口を閉ざした。

「聞くな。追及もするな。お前は軽い怪我で済んだんだろ……休暇を出す。帰ってちゃんと療養しろ」

その一言で、山下麻友は追い返されてしまった。

それでも麻友は確信していた。阿部雄輝は事情を知っている。でなければ、あの日あんな“忠告”を口にするはずがない。

オフィスを出たところで、佐々木陽奈が向かいから歩いてきた。顔には、隠...

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