第65章

六月二十二日、ライブ配信当日。

山下麻友はカメラの前に座り、乱れる鼓動を抑えるように深く呼吸を繰り返した。

松本綾乃がずっとそばに寄り添っている。

「緊張しないで。麻友なら大丈夫だって。前回は私のためだったけど、今回は麻友自身のためでしょ? ちゃんとキャリアを積んでいくって約束したじゃない。その第一歩なんだから」

麻友は小さく頷いた。

ここ数日、彼女はずっと調整を続け、この場に適応しようと努力していたのだ。

綾乃はそんな彼女を優しく見守る。麻友はいつもそうだ。他人のためなら火の中水の中、身を粉にして尽くせるのに、自分のこととなると途端に臆病になる。

配信開始時間が迫り、山口文也...

ログインして続きを読む