第69章

山下麻友は警察に通報し、車に乗り込んで立ち去ろうとしたが、ふとその言葉を耳にして足を止めた。

彼女は振り返り、田中紘也を見据える。

「『誰かさん』は随分と目が悪いようね。眼科医を紹介して差し上げましょうか?」

「俺の目はすこぶるいい。余計なお世話だ」

田中紘也の顔色がどす黒く沈む。彼は山下麻友がなぜこうも自分の「目」に執着するのか理解できなかった。

山下麻友は口元に笑みを浮かべた。

「あらそう? 合法と違法の区別もつかないようだから、てっきり目の病気がここまで転移したのかと思ったわ」

彼女はトントン、と自分の頭を指先で叩いてみせた。

その仕草の意味を理解した田中紘也は、顔を真...

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