第70章

「申し訳ありません、私……」

山下麻友はどうしても思い出せなかった。どこで阿部美奈と会ったことがあるのか。

三年前、彼女は病に伏せっていた。他人どころか、山口洸人のことさえ、認識できたりできなかったりする状態だったのだ。

阿部美奈は記憶を辿るように話し始めた。

「あの年、私はまだ看護師をしていました。病院で少し理不尽な目にあって、頭にきて辞めたんです。でも家でじっとしているのも嫌で、あるクリニックに応募しました。当時のそのクリニックの院長が、山口家の主治医だったんです」

そうして彼女は、山下麻友に出会った。

初めて山下麻友を見た時の衝撃は、阿部美奈には言葉にできないほどだった。

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