第72章

山下麻友は山口洸人の胸に倒れ込み、振り返って佐々木陽奈が反射的に逃げようとするのを見た。だが、その手はすでに彼に掴まれており、佐々木陽奈は近づくことすらできずに山口洸人に突き飛ばされた。

彼は暴力を振るったわけではない。ただ、その長身と本来の怪力ゆえに、たとえ手加減したとしても、佐々木陽奈を無様に尻餅をつかせるには十分だった。

佐々木陽奈は這い上がり、なおも食ってかかろうとしたが、山口洸人はたった一言、冷徹に告げた。

「もう警察に通報した」

警察署に連行されれば、恥をかくのは佐々木家の方だ。

佐々木陽奈は憎悪に満ちた目で山下麻友を睨みつけた。

「この件で私を脅そうなんて思わないで...

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