第80章

山口洸人が別荘に戻ったのは、すでに夜の九時を回っていた。外はもう完全に闇に包まれている。

実のところ、午後三時の時点で使用人から連絡は受けていた。

山下麻友は外出してから二時間も経たないうちに、わずか四十分で帰宅したという。

だからこそ、彼は焦ることなく仕事を片付けることができたのだ。

ドアを開け、薄暗いリビングを目にした瞬間、ふと安堵の息が漏れた。

とにかく、彼女はまだ家にいる。

離婚さえ口にしなければ、彼女もそこまで憎らしい存在ではない。

指が照明のスイッチに触れたその時、リビングの闇の中から幽鬼のような声が響いた。

「今日、どこに行ってたの?」

洸人の目はすでに闇に慣...

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