第82章

「姉さん、馬鹿なことはしないで」

スマートフォンの画面越しに、カフェの制服を着た弟の顔が映し出されている。

バイト中に、山口洸人から連絡を受けて慌てて電話をかけてきたのだろう。

弟は、心底心配そうだった。

「姉さん、約束したじゃないか。仕事を見つけて、ちゃんと生活して、僕と一緒に父さんの面倒を見るって……」

弟の声が涙で詰まる。

「お願いだから、馬鹿な真似はやめてよ。母さんが死んで、父さんも植物状態で……もし姉さんまでいなくなったら、僕はどうすればいいんだよ」

彼はまだ大学に入ったばかりだ。貧しい家計を支えるために努力し、聞き分けの良い弟だったが、それもすべて姉である山下麻友が...

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