第87章

会わせてもらえないとなれば、そこに裏があるのは明白だ。

「今日は阿部美奈さんの葬儀なのよ。たとえ具合が悪くても、顔ぐらい出すのが筋でしょう」

阿部柚汰は一歩も譲らなかった。

「申し上げたはずです。兄さんは休養が取れ次第、降りてきます。山下さんが兄さんを心配してくださるのは分かりますが、ここでお待ちください」

山下麻友と松本綾乃は顔を見合わせた。

松本綾乃が口を開く。

「分かったわ、麻友。阿部さんがそうおっしゃるなら、下で待ちましょう」

山下麻友も頷いた。

阿部柚汰がその場を離れると、松本綾乃が声を潜めて言った。

「上がらせてくれないからって、すごすご引き下がるの? 見つから...

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