第9章

山下麻友は書類を手に、山口グループ本社の前に立った。

そこには、息つく暇もないほどの忙しない空気が充満していた。

かつては麻友もここを訪れたことがあったが、ある不快な出来事を境に足が遠のいていた。

目の前にそびえ立つ巨大なビルを見上げ、麻友は一つ大きく深呼吸をして心の動揺を押し殺すと、足早に中へと入っていった。

受付ロビーは広々として明るいが、まるで迷宮のようだ。

麻友はプロジェクト事業部の渡辺部長をどこで探せばいいのかわからず、案内板の前で立ち尽くし、方向を見定めようとしていた。

その時、回転ドアから見覚えのある姿が入ってきて、専用エレベーターの方へ向かった。

橋本美波だ。

...

ログインして続きを読む