第90章

その場にいた二人の女は、耳を疑った。

とりわけ、橋本美波の衝撃は大きかった。

「洸人、本気なの? 本当に山下麻友と離婚するの?」

この日を、どれほど待ちわびたことか。

「ああ、別れる」

山口洸人は短くそう言うと、山下麻友の手首を掴み、背を向けて歩き出した。

「どこへ連れて行くつもり?」

「市役所だ」

その言葉を聞いた途端、山下麻友は抵抗をやめた。

病院の前で、二人が同じ車に乗り込む姿を初めて目にしながら、橋本美波の胸には嫉妬のかけらも湧かなかった。

彼女はすぐさま、田中紘也に電話をかけた。

「洸人が、離婚するって」

田中紘也は信じられないといった様子だ。

「マジかよ...

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