第94章

山下麻友は病室のドアの前に立ち、中の様子を窺った。

大奥様がベッドに横たわっているその空間では、口にできない言葉がある。

彼女は視線を医師へと向けた。

「先生、祖母の具合はどうなんでしょうか」

「あまり芳しくありません。こちらへ」

医師は麻友を診察室へと招き入れ、大奥様のレントゲン写真と診断書を示した。

「大奥様は癌です。ステージは中期。治療の希望が全くないわけではありませんが、完治する可能性は……高くありません」

医師の淡々とした言葉を聞き、麻友の心は冷たい谷底へと沈んでいった。

どうりで最近、大奥様からの電話が多かったわけだ。

前回訪ねた時も、無理やり引き止められて泊ま...

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