第10章

週末、月城奏が登山に行こうと提案してきた。

山の中腹まで登ったところで、私は息を切らしてへたばってしまい、彼が自主的に私を背負ってくれた。

「この光景、なんだか見覚えがあるな」

私は彼の広い背中にうつ伏せになりながら、既視感を覚えた。

「実は、君も昔、こうして俺を背負ってくれたことがあるんだ」

月城奏の声が山間に響いた。

私は呆然とした。

「俺が誘拐された時、食事を運んでくれる小さな女の子に出会ったんだ」

彼は過去の出来事を語り始めた。

「彼が施設に来たばかりの頃、いつも『凛』を探しに児童福祉施設に戻りたがっていた」

「ある日、彼がまたこっそり抜け出したんだ。...

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