第26章

「おばさん、僕が社内を案内しますよ」

そう言って周防律が、江村茜とその母親を連れて悠々と去っていくのを見送りながら、夏目南は脳が酸欠みたいにくらくらした。

――この男、病気なの?

「サインするまで待て」と言ったくせに、こっちにはろくに取り合わない。

世界中が自分を中心に回ってるとでも思ってるのか。

怒りが噴き上がるより早く、エミが夏目南の手から退職手続きのチェックリストと退職届をまとめて受け取った。

「夏目様、ほら……もう一度、いっしょに照合しません?」

夏目南は深く息を吸い、表情を冷やした。

「あなた一人でゆっくり確認して。私は仕事がある。ここで時間を潰す暇はないの」

立...

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