第56章

周防律は、夏目南に連れて行ってほしいと言われた先が、療養院だとは思ってもいなかった。

車が療養院の前で止まると、彼女の顔には、かすかな翳りが差した。

「先に車で待ってて。少し時間がかかるかもしれない。急ぐなら、先に帰ってくれてもいいよ。私はタクシーで帰るから」

そう言い残し、夏目南は一人で車を降りた。コートをきゅっとかき寄せ、手土産らしい食べ物を提げて、そのまま療養院の中へ入っていく。

療養院に誰がいるのか、周防律は知らない。

夏目南の家族といえば、宮原宏昭たちの一家ではなかったのか。

しかも、彼の調べでは、彼女とあの一家の関係はかなり冷え切っていて、ほとんど行き来もない。ほかに...

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