第72章

夏目南が退院する日、病院のロビーで周防律の姿が目に入った。

けれど彼は、どうやら自分を迎えに来たわけではないらしい。四十代半ばほどに見える中年の女性を支えながら、身を寄せるようにして小声で何かを話している。

その女性はどこか見覚えがあった。――ただ、どこで会ったのかがすぐには思い出せない。

まあ、知っていようがいまいが関係ない。

夏目南は踵を返し、見なかったことにして、朝日知也と一緒に病院の正面玄関へ向かう。

ところが朝日知也は、あっけらかんと周防律に声を掛けた。

「周防様。奇遇ですね」

周防律は返事をしようとして――夏目南を視界に捉えた瞬間、顔色を沈めた。女性を支えたまま、ま...

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