第9章

夏目南は脱力したまま病床に横たわっていた。いま、この胸に押し寄せる無力感は濁流みたいで、彼女という輪郭を丸ごと呑み込みそうだった。

……滑稽だ。

周防律があの書類を見れば、少しは心を痛めるかもしれない――そんな望みを、ほんのわずかでも抱いていた自分が。

そして、お爺さんと治美を、こんな男に託そうとした自分が。

回診に来た医師が状態を確認したあと、夏目南は切り出した。

「……子どもはいなくなりました。私は、どれくらい生き残れますか? 先生。綺麗事じゃなくて、正直に聞きたいです」

寄りかかれる相手がいないなら、頼るのは自分しかない。

生きる。――ちゃんと、生きる。自分の人生を、自分...

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