第10章

リリー視点

 彼はひどく疲れて見えた。目は赤く、シャツは皺だらけ。地面に膝をつく私と、傷を負ったカーターへ視線が落ちた瞬間、表情がいっそう複雑に歪む。

「今夜のお前の動きは怪しすぎたんだ、クロエ」

 ヴィンセントの声は氷みたいに冷たい。

「雇った連中がいるのも分かってた。尾行して、ヤバいと思ったから通報した」

 クロエが目を見開き、信じられないとでも言いたげに彼を見つめる。

「ヴィンセント……どうして……私はあなたの妹――」

「義妹だ」

 ヴィンセントが遮る。

「それに、お前はもう、その立場に値しない」

 彼は背を向け、二度と振り返らなかった。

 警官がクロエの両手に手...

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