第107章 先延ばし

電話を切ると、今野浅子は足早に会議室へ向かった。

まだ会議は始まっていない。松村理玖の姿もなく、ひと目見渡せば、先に来ているのは雪乃だけだった。車椅子に座ってはいるものの、その存在感は少しも揺らいでいない。

傍らにはアシスタントが立ち、車椅子の背後に手を添えながら、今回の会議資料を整えては机の上に順に並べていく。

雪乃は相変わらず自分の手で準備を進めていた。足の怪我など最初からなかったかのように。これから先の段取りを、たった一分も狂わせるつもりはない――そんな気配。

中島晴美の言葉が脳裏をよぎり、今野浅子の目に計算の色がちらりと走る。すぐに表情を整えると、ノックもせずに会議室のドアを...

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