第108章 終わり

松村理玖の目に、かすかな不満が走った。薄い唇をきゅっと結び、自分が連れてきた面々を一瞥する。口調には、いつもより強い圧が混じる。

「彼女の足、怪我してるのが見えなかったのか?」

数人が顔を見合わせ、やがてそのうちの一人がうなずいた。

「見えております。ただ、松村社長――会議は延期できません。延期すべきかどうかで揉めるより、すぐ始めたほうがいいでしょう」

「早く始めて早く終わらせれば、奥様も早く切り上げて病院へ行けますし」

松村理玖は眉をきつく寄せ、まだ何か言いかけた。だが、車椅子の取っ手を握る手に、雪乃がそっと掌を重ねて押さえる。

「大丈夫です。会議は予定どおりで。ほんとに平気」...

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