第111章 会わせない

彼女は泣くことさえ忘れていた。まん丸の瞳いっぱいに溜まっているのは、涙ではなく恐怖だ。雪乃の傷はすでに医者に処置され、血まみれの痛々しい惨状は見えない。それでも萌花の動揺は、さっきより小さくはなっていた。

萌花は唇をぎゅっと噛みしめ、声が漏れないよう必死に堪える。小さな口を震わせながら、掠れた声で言った。

「ごめんなさい……ごめんなさい、ママ……」

次の瞬間、萌花の目から涙が糸の切れた真珠みたいにぽろぽろ落ちた。怯えたまま、雪乃を見上げる。

どれほどの沈黙が流れただろう。リビングに、雪乃の淡い声が落ちた。

「……大丈夫」

萌花だけを見ている。瞳には、ぬくもりが一切ない。

その視...

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