第117章 医者

彼女は唇をきゅっと結び、顔をそむけた。震える声で、必死に言い訳を重ねる。

「そんなつもりがあるなら……最初から来てない」

苦しい理屈だ。今野爺さんの中では、すでに中島晴美への疑いが膨らんでいた。今日の唐突な訪問にも、ある程度の見当はついている。

雪乃は、この件で今野爺さんをこれ以上振り回したくなかった。杖に体重を預けながら、ゆっくりと前へ出る。

「おじいちゃん、もう戻って休んで。私たちのことは、私たちで話をつける」

だが今野爺さんが、中島晴美をここに残して引き下がるはずがない。

片方は怪我をしている病人。もう片方は「重い病」で余命わずかだと言い張る病人。そんな二人を同じ部屋に置く...

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