第125章 謝らなくていい

林谷先生は救急箱を提げたまま、ちょうど玄関口まで来ていた。杖をつき、ゆっくりと一歩ずつ身体を運ぶ雪乃の姿を見つけた瞬間、眉間に皺が寄る。

「奥様……どうして今野社長に手を貸してもらわなかったんです? その足、感染してますよ。ほら、リビングのソファに座ってください。すぐ処置し直します」

雪乃は小さく首を振った。

「いい。ひとりで行ける。それより萌花の様子を見て、もう大丈夫だって確認してからでいい。私は急いでないから」

そう言われ、林谷先生は救急箱を持って萌花の部屋へ入った。室内には、顔色の沈んだ今野優空がいる。何を言えばいいのか分からず、林谷先生は黙って眠る萌花の体温を測る。

平熱に...

ログインして続きを読む