第163章 出国

雪乃は、自分の情報がすでに誰かに目をつけられていることなど知る由もなかった。マンションに戻り、ドアを閉めた途端、ポケットからさっき押しつけられた名刺を取り出す。

デザインは拍子抜けするほど簡素で、秘書の名前があるだけ。あの男は用心深く、自分の名刺は残していなかった。

雪乃は眉をひょいと上げ、名刺を玄関の棚に放り投げた。

翌朝、目を覚ましたのはアラームの音だった。外はもうすっかり明るい。起きて最初にしたことは、スマホを手に取り松村理玖へ連絡を入れること。

「桃菜、どう? 今日、仕事終わったらお見舞いに行ってもいい?」

返事が来たのは、会社に着いてからだった。松村理玖の返信は短い。

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