第168章 泣いた

雪乃は今野爺さんの、ざらついているのに温かい手を握り、やわらかく言った。

「ちょうど薬を少し持ってきたの。おじいちゃん、あとで使用人に渡して煎じ方も伝えるから、忘れずに飲んでね」

そう言ってから、階段のほうにある、むちっとした小さな影に気づいたように視線を止める。

階段の陰。萌花は小さな身体を縮こまらせ、雪乃をじっと見上げていた。出てくることも、声を出すこともできないまま。

雪乃は目線を引っ込め、今野爺さんに向き直る。

「おじいちゃん、話したいことがあるの」

雪乃が会社を辞めたと聞いたときから、今野爺さんの顔色はひどく沈んでいた。呼吸も荒い。相当、腹に据えかねているのが分かる。

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