第170章 腕が落ちていない

「いや、まったく衰えていない! 雪乃、君には驚かされたよ!」

エリックの口調がふいに熱を帯びた。言い切った直後にはっとしたのか、すぐに手を振り、声を引き締め直す。

「いやいや、今のは言い過ぎだな。『まったく』じゃない。だが……雪乃、君の昔の芯は残っている」

驚くほど澄んだ目が、雪乃をまっすぐ捉える。

「さっき弾いていたときの君は、初めて会った頃と同じだった。音も、たたずまいも。才能がある。なのに、どうして手放した?」

エリックは首を振り、惜しむように息を落とした。

「ずっとヴァイオリンをやめずにいれば、今ごろ国際舞台に立っていたはずだ。……まあいい。まだ若い。今からでも間に合う」...

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