第182章 電話

雪乃は足早に歩み寄ると、そっと彼を抱きしめた。声には、あふれるほどの感謝が滲んでいる。

「ありがとうございます、先生。先生がいなかったら、私、こんな舞台まで来られなかったかもしれません。本当に、ありがとうございます」

エリックは一瞬、目を見開いた。まだ言いかけの言葉が唇に残ったまま、雪乃の不意の抱擁に遮られる。

やがて彼はふっと笑った。ここ数日の、あの妙な意地の張り合いも、その瞬間にはきれいさっぱり消えていた。目の奥を、かすかな後ろめたさがよぎる。

エリックは雪乃の肩を軽く押して、そっと身体を離した。

「いや、こちらこそすまなかった。君が自分の考えを貫いてくれて、本当によかったよ。...

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