第186章 凶行

「先に帽子とマスク、外してくれる? 顔を見せてほしいの。どこかで見た気がして……外してもらえるかしら」

 メイク担当はびくりと全身をこわばらせ、さっと顔を背けた。取り繕うように言う。

「江川さん、まだちゃんと身支度もしてなくて、ちょっとひどい顔なんです。帽子とマスクは、このままでいいでしょう? 仕事には差し支えませんし。先に目を閉じてください、急いでベースだけでも仕上げないと」

「もうすぐ出番なんです。時間がないんですよ」

 雪乃は、ますます違和感を覚えた。ゆっくり立ち上がり、化粧台から少し距離を取る。

「あなた……いったい誰?」

 その言葉が落ちた途端、さっきまで頑として帽子も...

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