第191章 遺品

江川雪乃の態度がどれだけ冷たくても、彼女はいつも「雪乃」と名で呼んだ。距離を詰めたい、その一心で。

「私には影響ないわ。どうぞ。私に何の用?」

少し強張っている林谷恵理に比べ、林谷圭太のほうはどこか自然体だった。彼は一度恵理に視線を投げ、半歩前へ出る。両手には、細工の施された小さな木箱。

「雪乃。これ……これは、叔母さんが残した遺品なんだ。ずっと俺たちで保管してきた。恵理とも話して、君に渡したほうがいいんじゃないかって」

圭太は言いながら、慌てて付け足す。

「……すぐ断らないで。いったん見て。受け取ってくれるなら、それが一番いい」

赤黒い紅木の箱は彫りも繊細で、ひと目で安物ではな...

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