第30章 何かを起こしそうにない

雪乃は戸惑いながらそれを受け取り、礼を言って開けてみる。中に入っていたのは牛乳とサンドイッチだった。

スマホがぶるりと震えた。画面には杉谷和樹からのメッセージ。食事を抜くな、という短い注意。

朝食を済ませると、雪乃は荷物をまとめ、徹夜で直した企画書を抱えた。ひとつ深呼吸。

どれだけ顔を合わせたくなくても、今日は今野グループに提出に行かなければならない。

――どうか、無事に終わりますように。

8時。今野グループ本社前。

雪乃は正面玄関の前に立ち、空へ突き刺さるような高層オフィスビルを見上げた。胸の奥が、甘さと苦さでぐちゃぐちゃに混ざる。

以前、ここへ来たことはない。

今野の妻と...

ログインして続きを読む