第32章 彼女をいじめたのか?

雪乃は萌花を抱きかかえたまま、足早に院内へ入った。受付を済ませ、番号札を握って順番を待つ。

あれこれ手続きをこなすうち、気づけば30分以上が過ぎていた。萌花を抱え続けた腕はじんわり重く、雪乃の額には薄く汗がにじむ。

「急性胃腸炎ですね」

医師は聴診器を外し、萌花に視線を落とした。

「最近、何か変なものを食べましたか?」

雪乃は腕の中の萌花を見下ろす。

萌花は小さく縮こまり、お腹を押さえたまま、医師の言葉に目を泳がせると、雪乃の胸元へ顔を埋めて黙りこんだ。

「萌花」雪乃は声をやわらげる。「最近、何食べたの?」

萌花はむすっとしたまま、聞こえないふりをする。

医師は母娘をひと目...

ログインして続きを読む