第45章 悪者

背後から飛んできた声は大きくはないのに、床を打つ石みたいに重かった。今野爺さんだ。杖をつきながらリビングへ姿を見せ、その背後には弁護士がひとり。鞄と書類を手に、恭しく今野爺さんの後ろに控えている。

リビングの空気が、ぴんと張りつめた。誰もが息を潜める中、今野優空は硬直したまま振り返る。振り向いた瞬間、弁護士の手元の書類に視線が吸い寄せられ、喉仏がごくりと上下した。

今野浅子もそれに気づいたのだろう。雪乃を怨みのこもった目でぎろりと睨みつける。

「昨日あたしが言ったこと、全部ムダだったってわけ? 今野優空、あたしを死んだことにでもしたつもり! あたしがどうするかは、あんたが口出しすること...

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