第49章 事件が起きた

今野優空の不満げな視線がさらに濃くなる。眉をひそめ、何か言いかけた、そのとき――ふいに、雪乃の濡れて雫を落とす髪先が目に入った。

服もすっかり雨を吸って、肌に張りついている。輪郭のきれいな体つきが、いやでも浮き上がって見えた。

「雨に打たれて帰ってきたのか? 運転手はいるだろ。どうして送らせなかった」

今野優空が一歩詰め、冷たい声で問いただす。雪乃の目が、わずかにうんざりと細くなった。

雨に濡れたのは、さっさと熱いシャワーを浴びたいからだ。なのに狙い撃ちみたいな目に遭った上、優空に説教までされる。どんなに温厚でも、火がつく。

「あなたには関係ない。どいてくれる? お風呂入らないと風...

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