第54章 中島晴美が来た

今野爺さんの視線が部屋の面々を一巡し、皆の背に隠れるように立つ今野浅子へ落ちた瞬間――その眼にひやりとした冷えが走った。

今野浅子の顔に浮かぶ動揺と目の泳ぎ方は、隠しようもないほど露骨だった。うつむいて、できることならこの部屋から消えてしまいたい。そんなふうに見えた。

目を覚ましたとき、医者から今日の出来事はすでに聞かされている。外の言い争う声も耳に入った。となれば、自分が倒れた原因が誰にあるのか――腹の底では、もう分かっている。

今野爺さんは眼の冷たさを押し込み、その場で騒ぎ立てることはしなかった。代わりに、部屋の端に立つ雪乃へ小さく手招きする。

「雪乃、こっちに来なさい」

やわ...

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