第57章 和らげる

そのあと雪乃は、バタンと勢いよく部屋のドアを閉めた。動きは迷いがなく、きっぱりしている。

今野優空の言葉なんて、一秒だって聞きたくなかった。

扉一枚が外の気配を断ち切る。雪乃は小さく息をつき、部屋を手早く整えると着替えを済ませ、二階へ上がった。

部屋では萌花がまだ眠っていた。頬をシーツに押しつけ、口を少し開けたまま、すぅすぅと寝息を立てている。唾液がわずかに流れ、シーツにぽとりと落ちていた。

雪乃は眉をひそめ、そっと近づいて抱き上げる。腕の力は驚くほどやさしい。

自分の娘だ。自分で育ててきた子だ。小さいころの萌花は雪乃への依存が強く、いつも後ろをちょこちょことついてきて、甘い声で「...

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