第61章 濡れ衣

使用人は顔面蒼白になり、慌てて首を横に振った。

「ど、どうしてそんなふうに疑うんですか! 私はこの家の物を外に持ち出して売ろうなんて、そんなつもりじゃ……!」

雪乃が口にした「契約」は、脅し文句でも何でもなかった。

雇われるとき、使用人たちは実際にそれへ署名する。

目的はただ一つ――屋敷の物を勝手に持ち出し、外で売りさばくのを防ぐため。

そして罰則は苛烈だ。賠償も、刑事罰も、どちらも免れない。

契約の場で、執事から相当きつく釘を刺されていたのだろう。だからこそ雪乃が「契約」と口にした瞬間、使用人はここまで怯えた。

雪乃の視線が、彼女が胸に抱えて離さないバッグへ落ちる。

声が鋭...

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