第71章 彼は先輩だ

家の小悪魔の話になると、彼の口調にはどうしようもない甘さが混じった。

「うちのはさ、小悪魔なんだよ。君の娘さんはきっとお利口で聞き分けがいいんだろうね。だって君、うちの学校じゃ昔から“いい子”で有名だったし」

「娘さんも、君に似たんじゃない?」

松村理玖のからかいを聞き取って、雪乃は口元をふっと緩めた。

「それ、ほんとに褒めてるの? それとも、何か含みがある?」

くすり、と小さく笑い声が漏れる。午後いっぱい話しているうちに、眉間に溜まっていた陰りはずいぶん薄れていた。

いつからだろう。家という檻に閉じ込められ、子どもと夫の周りだけをぐるぐる回るようになって――最後に返ってきたのは...

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